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実況見分調書はどのように作成されるのか―実況見分に臨む際の注意点等

実況見分調書はどのように作成されるのか―実況見分に臨む際の注意点等

■ポイント


1.実況見分調書は、事故発生当時の状況を明らかにするため、警察官が一定のルールに基づき可能な限り正確に作成する文書。

 

2.実況見分調書を作成する際は、原則として加害者、被害者、同乗者の立会いが求められる。

 

3.現場の状況と関係者の指示説明などに対応した、合理的な見分が行われることが予定されていること

 

⇒結果的に、指示説明と異なる内容が記載された実況見分調書が出来上がらないように以下の注意が必要。

 

■重要

① 実況見分に臨む際には事前に指示説明事項をまとめておくこと

② 現場で指示内容について言った言わないの議論にならないように、念のため自分の発言を録音しておくこと

③ 実況見分が完成した後は、内容を確認し、訂正が必要な場合には速やかに訂正依頼をすること

 

第1 実況見分とは?

 

実況見分とは、犯罪現場等において、身体又は物について事実発見の必要があるときに行われる、その物の形状や性質を五官の作用で感知する行為(強制処分である「検証」と同じ内容のことを任意処分として行う場合)です。

 

言葉にするとイメージが湧きにくいところですが、事故現場で皆さんがよく目にする、事故発生当時の状況を明らかにするために、警察官が事故現場をそのまま保存して、写真を撮り、チョークで衝突地点をマークし、メジャー等で関係する距離を測定等しているあの行為です。

 

■関係条文

「犯罪捜査規範」

(実況見分)

第104条 犯罪の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。

2 実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。

 

「交通事故捜査処理要領(概要)」(昭和47年9月27日発交指第465号〔警察本部長から各部・課・官・隊・校・署長あて〕)※各都道府県において公表されている交通事故の捜査処理に関する規定は異なりますが、石川県警察本部のHPで公表されている規定が詳しく、各地で細部は異なると思われるものの、参考情報として引用しています。なお京都府警察本部のHPでは、交通事故の取扱いに関する訓令が公表されていますが、1枚ものの概要のみであって具体的な内容を確認でてません。また、現時点で警察庁のHPで確認できる通達の中にも、交通事故の捜査処理に関する全般的な規定は見当たりません。

 

(現場見分等を要する事項)

第24 現場見分等は、別表第1「実況見分実施項目」によって、事故発生当時の状況を明らかにしなければならない。

2 関係自動車の速度、ブレーキテスト、その他の実験観察を行うときは、当該区間の通行禁止制限措置を講ずる等、事故関係者や一般の交通に対する危険防止に注意しなければならない。

 

第2 実況見分の実施方法


捜査規定(以下第2で引用する条文は全て「交通事故捜査処理要領(概要)」)を通じて、実況見分がどのように行われるか見ていきましょう。

 

1.実況見分の基本的事項


■関連条文

(現場見分の基本的事項)

第22 現場見分にあたっては、次の事項を基本として行い、つとめて一般の交通に支障を与えないように配意しなければならない。

1 迅速、正確、綿密に行うこと。

2 公平な態度で、事故原因を究明すること。

3 当事者、および目撃者を可能な限り立会わせること。

4 現場の状況と関係者の指示説明などに対応した、合理的な見分を行うこと。

5 有形資料と関係者の指示説明との関連性における矛盾点を究明すること。

 

2.関係者の立会いと指示説明


■関連条文

(関係者等の立会いと指示説明)

第23 現場見分等には、原則として加害者、被害者、同乗者の立会いを求めるものとし、次に掲げる関係地点について指示説明を求めなければならない。

(1)相手側を最初に発見した地点

(2)危険を感じた地点

(3)避譲措置をとった地点

(4)衝突した地点

(5)停止、転倒した地点

(6)目撃者の位置

(7)関係物件などの位置、形状、方向、形態

(8)その他、事件の状況に応じた地点

2 指示説明を求めるにあたっては、その範囲を超えた取調べになってはならない。

3 指示説明が、現場の状況と矛盾する場合は、実験観察を行うなどその矛盾の解明につとめるとともに、その旨を実況見分調書に記載しておかなければならない。

4 外交特権を有する者であっても、できるだけ立会いを得るようにしなければならない。

 

3.関係地点の測定

(関係地点の測定)

第26 関係地点の測定にあたっては、次の事項に留意しなければならない。

1 ステレオカメラによる場合は、別に定める要領によること。

2 巻尺で測定するときは、たるみがないようにすること。特にスリップ痕等で曲線などになっている場合は、曲線どおり正しく測定すること。

3 衝突地点その他重要な地点は、付近の不動物件または地点、不動物件がないときは仮設の不動物件からの位置、方向、距離を測定しておくこと。

4 関係当事者相互間の距離、および路側端からの位置等を正確に測定すること。

5 特に将来、紛争のおそれが考えられる衝突等の地点、その他重要な関係地点、およびこれらの地点を測定した距離などについては、立会人に明示しておくこと。

 

4.現場写真の撮影

(現場写真の撮影)

第27 事故現場または証拠物等を撮影するにあたっては、捜査および公判維持の面から、次の措置を講じ証拠としての証明力の確保につとめなければならない。

1 必要がある場合、立会人を入れるか、または立会人の署名札を入れること。

2 証拠価値を害するような場所に、立会人・見物人を立たせたり、その他の物件をおかないこと。

3 タイヤ痕、塗膜片、その他の証拠物の大きさを正確に表すように巻尺、スケール等をおき、かつ、証拠価値を害さないように撮影すること。

4 色彩を立証する必要のあるものについては、カラー写真による撮影をすること。

5 撮影したときは、見取図にその地点を明示すること。

 

(写真撮影の順序)

第28 見分責任者は、補助者に写真の撮影をさせる場合、撮影の目的物、範囲、角度、証明力確保のための措置などについて的確な指示を行い、次の順序により撮影しなければならない。

1 まず、現場のありのままの状態を撮影すること。

2 現場見分等の進行状況等を考慮しながら行い、消滅、変化、散逸し易いもの、あるいは危険防止等のため早期に除去を要するものを、最初に撮影すること。

 

(写真撮影の対象)

第29 写真の撮影は、おおむね次に掲げるものについて、事故の態様により必要に応じて行わなければならない。

1 事故現場に、到着したときの現場の状況

2 現場の道路、交差点、その他見とおしの状況

3 建築物、信号機、道路標識、その他道路交通の附属物の状況

4 衝突時の状況(必要によっては、加害車と被害車を復元した状況)および衝突痕の状況

5 停止時の状況(移動しているときは、その状況)

6 スリップ痕、タイヤ痕、散乱物件等の状況

7 死者および傷者の状況

8 加害者が、危険を認知した地点から、被害者側を見た状況

9 その他、必要と認めるもの

 

第3 実況見分調書とは?


1.意義


第2の実況見分の結果を記載した書面です。

 

2.種類


交通事故捜査では、被害者の傷害の程度等に応じ、簡略化した書式で捜査書類を作成する場合があります。

①基本書式:一般の刑事事件等と同じ捜査書類の書式

②特例書式:基本書式を簡略化したもの(被害者の傷害程度が約3か月以下であるなどの要件を満たす事故に適用)

③簡約特例書式:特例書式を更に簡略化したもの(被害者の傷害程度が約3週間以下〔正確には、加療期間が診断時において受傷日から起算して3週間と2日までの事故〕であるなどの要件を満たす事故に適用)

 

3.記載内容


書式に違いはあるものの、一般的な基準としては、次のとおり記載すべき内容が定められています。

 

「犯罪捜査規範」

(実況見分)

第104条 1項、2項省略

3 実況見分調書には、できる限り、図面及び写真を添付しなければならない。

4 前三項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。

 

(実況見分調書記載上の注意)

第105条 実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。

 

「交通事故捜査処理要領(概要)」)

(実況見分調書作成上の一般的注意事項)

第33 実況見分調書を作成するにあたっては、次の事項に留意しなければならない。

1 見分(実験)、認識した事実をありのまま、秩序正しく記載すること。

2 文飾や抽象的な表現をさけ、他人が見てわかりやすいように記載すること。

3 空白欄には、不動文字化されている項目以外の最低必要事項のみを記載し、欄内に記載しきれないときは、別紙を補充して記載すること。

4 過失の有無の判断は、記載しないこと。

 

(見取図の作成)

第34 見取図を作成するにあたっては、次の要領によらなければならない。

1 原則として、200分の1の縮尺とすること。ただし、簡約特例書式の図面は必ずしも正確な縮尺によって記載することを必要としない。道路の形状に応じて相似形を作成し、車両、道路幅員、関係距離相互の比例を失わなければよい。

2 方位は、原則として北を上にすること。

3 不動基点は、必ずその名称を記載すること。

4 関係地点の距離は、メートル法を用いること。

5 物件、自動車等の大きさは、縮尺と比例を失わないこと。

6 その他、鑑識図の作成例によること。

 

実況見分調書は、事故発生当時の状況を明らかにするために、現場の状況と関係者の指示説明などに対応した合理的な見分が行われ、以上のような基本的ルールに基づき正確に作成されることが予定されている文書です。

 

そのため、一度作成されてしまうと、事故状況は基本的に実況見分調書の内容のとおりと判断されることが多いのが現状です。

 

したがって、①実況見分に臨む際には事前に指示説明事項をまとめておくこと、②現場で指示内容について言った言わないの議論にならないように、念のため自分の発言を録音しておくこと、③実況見分が完成した後は、内容を確認し、訂正が必要な場合には速やかに訂正依頼をすることが重要になります。

 

実況見分に対応する方は、ぜひ以上の3点について、意識をしていただければと思います。

 

※指示説明事項

(1)相手側を最初に発見した地点

(2)危険を感じた地点

(3)避譲措置をとった地点

(4)衝突した地点

(5)停止、転倒した地点

(6)目撃者の位置

(7)関係物件などの位置、形状、方向、形態

(8)その他、事件の状況に応じた地点

以上

(弁護士 武田雄司)

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